京都ジャズ喫茶妄想回顧録5

|エピソード5|@三角堂「マッチ」 5月の緑眩しい午後、納戸で古い記憶を探していた。確か、透明のよくあるプラスチックの収納ケース。 見つけ出した頃には、窓から傾いた日差しが入ってきていた。 その記憶は、ケースの中に仕舞い込んでいたはずのジャズ喫茶のマッチ。70年代の学生の頃、毎日どこかのジャズ喫茶へ行き、珈琲一杯で散々レコードを聞いた。まだ最新アルバムやレアなアルバムをすぐに聴けることが貴重な時代、情報も少なく、さらにジャズ喫茶のオーディオシステムで聴く臨場感のある音は夢心地だった。...

京都ジャズ喫茶妄想回顧録4

|エピソード4 |@ジャズバーMrika「タイムトリップ」 70年代後半、ジャズ喫茶というよりジャズバーというのが相応しいその店で、しょっちゅう友人Sと飲み明かし、語り明かし、若さの若さたる所以を満喫していた。よく、最終を逃したヘベレケの僕たちに散々ジム・ホールとアート・ファーマーを聴かせて、始発まで夜明かしさせてくれた。 今は、こんなバーがどれだけあるのだろう?...

京都ジャズ喫茶妄想回顧録3

|エピソード3 |@デーゲー「ご祈祷」   京都は出町柳。小さな商店街の西の端に学生たちが「デーゲー」と呼ぶジャズ喫茶が在ったのは、1970年代のこと。ここでは、正確な店名は想像にお任せすることにしよう。 デーゲーは1970年に開店し、80年代のいつまで営業していたかどうか、定かではない。今は、当時デーゲーが2階に店を構えていたビルだけが静かに残っている。...

京都ジャズ喫茶妄想回顧録 2

|エピソード2 |@明るい田舎「JBL」 70年代後半、私は大学生活も慣れ、京都の街にも慣れ、そして親しい友人もできていた。彼は、当時オーディオブーム全盛期の若者に外れず、毎日ジャズ喫茶をハシゴする正真正銘のマニアだった。その探究心と情熱は日毎に増し、学業に関するそれとは比べ物にならなかった。...

京都ジャズ喫茶妄想回顧録

|エピソード1 |@BOZA「ヘレン…」 1970年代、京都。地元の京都人も唸る暑い日だった。 今日も数年前にオープンした小さなジャズ喫茶を開ける。地下にある我が店には長年をかけて収集したアフリカの仮面で壁一面を飾っている。レコードと並ぶ私の自慢だ。 店名は「BOZA」。毎日、学生たちが入れ替わりやってくる。ほとんど話したことはないが、顔を覚えてしまった若いお客ばかりだ。大金をはたいて買ったアルテックA-7に耳を傾け、じっと聴いてくれる。 今日はオーネット・コールマンからいこうか。...