京都ジャズ喫茶妄想回顧録8

|エピソード8|@喫茶P「センチメンタルジャーニー」|   梅雨の雨が終わりの兆しを見せ、いよいよ蝉が朝から鳴き始めた午後、今日もいつも通り店を開けゆっくりとレコードの選盤をしていた。 暑くなりそうな初夏の日差しが大きな窓からギラギラと差し込んでいる。 その時、店の重いドアが開きパナマ帽にジャケット姿の老齢の紳士が入ってきた。 「やってますか?」 2000年代、ジャズ喫茶の客は多くはない。うちも同様に静かな営業だったから店内を見て尋ねたのだろう。 「やってますよ。いらっしゃいませ、どうぞ」...

京都ジャズ喫茶妄想回顧録5

|エピソード5|@三角堂「マッチ」 5月の緑眩しい午後、納戸で古い記憶を探していた。確か、透明のよくあるプラスチックの収納ケース。 見つけ出した頃には、窓から傾いた日差しが入ってきていた。 その記憶は、ケースの中に仕舞い込んでいたはずのジャズ喫茶のマッチ。70年代の学生の頃、毎日どこかのジャズ喫茶へ行き、珈琲一杯で散々レコードを聞いた。まだ最新アルバムやレアなアルバムをすぐに聴けることが貴重な時代、情報も少なく、さらにジャズ喫茶のオーディオシステムで聴く臨場感のある音は夢心地だった。...

京都ジャズ喫茶妄想回顧録

|エピソード1 |@BOZA「ヘレン…」 1970年代、京都。地元の京都人も唸る暑い日だった。 今日も数年前にオープンした小さなジャズ喫茶を開ける。地下にある我が店には長年をかけて収集したアフリカの仮面で壁一面を飾っている。レコードと並ぶ私の自慢だ。 店名は「BOZA」。毎日、学生たちが入れ替わりやってくる。ほとんど話したことはないが、顔を覚えてしまった若いお客ばかりだ。大金をはたいて買ったアルテックA-7に耳を傾け、じっと聴いてくれる。 今日はオーネット・コールマンからいこうか。...